「さよなら。」
今でも誰より大切だと想える人。


「Cried Christmas」


「まーき君!」
その声に反応し、槙悠太は後ろを振り向いた。
後ろにいたのは同じクラスの湯原真美だった。
「何?」
悠太は冷たくいった。
「12月24日!あいてる?」
真美は悠太に対してとても目を輝かせている。
「あいてるけど・・・」
悠太は真美から目をそらし、小さな声でいった。
「よかった!あのね・・・」
真美は自分のカバンからなにか取り出そうとしている。
ガサゴソ・・・物音を立てる。
「あった!これ!」
カバンから取り出したものを悠太に見せた。
それは遊園地の特別チケットだった。
チケットには「クリスマス限定でアトラクションすべて無料!」と書かれている。
「ね?すごいでしょ!?無料なんだって!」
真美は小さい子供のように目が輝き、声が高い。
「そんなの、彼氏といけばいいだろ。
 クリスマスなんだし。」
悠太は冷たくそういった。
真美はその瞬間、下を向いて落ち込んだ。
「・・ごめん。」
しばらくして悠太は謝った。
すると、
「いいの。あのね・・実はふられちゃったんだ、あたし。」
「え?」
悠太は驚いてつい、言葉をはっした。
真美は実際、男にもてるし、悠太の友達でも真美を狙っているのは多かった。
「もう今年は彼氏、作らない。
 だから、友達の悠太と一緒にいきたい。」
悠太は内心、ドキッとした。
その時、真美の目には光るものがあった。 でも表情は笑顔。
「わかった・・・いく。」
悠太は真美の顔を見て断れずにはいられなかった。
「よかった!じゃぁ・・・」
真美はノリノリでその日の待ち合わせやらを考えていった。
その日の放課後、下駄箱にはひとつの紙があった。
(12月24日PM5時、駅前で。   真美)
真美からのメモだった。
悠太はそれを制服のポケットにしまった。
24日から3日前のことだった。


24日PM5時。
駅前にはもう真美はいた。
悠太は真美のもとへ走って行った。
「待った?」
「うん・・・結構。でもいいよ!」
いつも通り明るい真美。
「あ・・・・」
真美が見つめている先をふと見ると、そこには
真美の元彼の菅谷真琴がいた。
その横には見た事もない女の姿。
「菅谷・・・・。」
悠太が声を出すと、真美は下を向いた。
「・・・・くやしい。」
真美が精一杯いった、真琴への悪口。
小さい声でいったが悠太にはしっかり聞こえていた。
「どうする?いく?」
悠太は真美を見ないで真琴のほうをみて言った。
「・・・・・いく・・。」
真美は今にも泣きそうな声で言った。
悠太はそんな真美の手を握り、駅のホームまでいった。

「はい、切符。」
悠太は真美のぶんまで切符を買ってきて真美に渡した。
「ありがと。」
真美は下を向いていった。
「・・・・いこっ!もう大丈夫だから。」
いつもの真美だった。
悠太は安心し、電車にのり、遊園地へ向かった。
そのあいだ、悠太と真美はずっと手をつないでいた。


遊園地。
カップルや親子連れや沢山の人でにぎわっていた。
キレイなクリスマスツリーもたっている。
「すごいねー!」
真美がはしゃぎ歩く。
その後ろを悠太が歩いていく。
次々に色んなアトラクションにいった。
そして最後・・・観覧車。
2人で向かい合わせで座る。
沈黙が続く。
その時、真美が口を開いた。
「今日はありがとう。」
「え」
悠太は突然の言葉に驚いた。
「真琴を見て泣いちゃったりとか・・色々迷惑かけたけど
 付き合ってくれてありがとう。」
「いや・・こっちこそ、ありがとな。」
悠太は少し照れながら言った。
「真美といてさ、なんか・・楽しかった。」
「よかった。」
真美と悠太は笑顔になった。
もうすぐで降りなければならない。
時間が・・・・迫っていた。
そのたび、2人は黙ってしまう。
腕時計の針が進む音しか聞こえない。
「・・・・・悠太。」
真美がよんだ。
「何?」
悠太が優しく問い掛ける。
「あのね。」
真美が悠太の目を見る。
「・・・・・好き。」
真美は悠太に告白した。
その時、観覧車から降りることになった。


ガタンゴトン・・・・
電車で2人座っている。
何もしゃべらずに。
微妙な距離感がある。
そのまま、2人の住んでいる街に戻ってきた。
駅から離れ、悠太は真美を家まで送る。
・・・・・・
真美の家に着いた。
「ありがとう。」
真美はさびしそうだったが、笑顔を作っていた。
逆にそれが悲しい。
「・・・真美。」
悠太が真美の名前をいったのは真美がドアをあけようとした瞬間だった。
「俺も好きだから。」
そういって悠太は走って自分の家へ帰っていった。
真美は呆然として、そのまましばらくドアの前に立っていた。


25日、朝から悠太の携帯がなった。
相手は菅谷だった。
「・・・・もしもし?」
悠太はめんどくさそうに電話に出た。
「大変なんだ!真美が・・・・」
真美は悠太の家にいこうとした途中、車にはねられ、重体だという。
悠太はすぐに着替え、病院へ向かった。

「槙!」
そこには菅谷、真美の家族、真美の友達がいた。
菅谷はすぐに悠太のところに向かっていった。
「お前、昨日真美とデートしたらしいじゃないか。
 なにかひどいことしたのか?」
(ひどいことをしたのはお前だろ)
そう、すぐに頭に浮かんだ。
だが、いえなかった。
「なんかいえよ・・・。」
菅谷は悠太の顔をジッと見ている。
「なんもいってないよ。」
「嘘だろ!真美はお前の家まで急いでいこうとしたんだぞ!?」
「・・・昨日の夜、真美に好きだと言われた。」
「え・・・?」
菅谷は驚いた顔をしている。
「それで俺は真美に好きだといったんだ。」
菅谷にだけ聞こえるようにいっていたが、みんなに聞こえていた。
「・・・・槙君。」
よんだのは真美の母、直子だった。
直子は悠太に一つの箱を渡した。
「これは・・・」
「真美が持っていたの。」
すると直子は病室からでていった。
そのあとに続き、家族、友達がでていき、菅谷だけが残った。
「・・・なにかあったらすぐにナースコールしろ。」
そういい、菅谷もでていった。
悠太は真美が寝ているベットの横へ行った。
そしてさっき渡された箱を開ける。
そこには・・・・1つのビーズで作られた指輪があった。
真美の枕元にはおそろいの指輪があった。
「・・・・真美・・。」
その瞬間、悠太の目からは涙が溢れた。
「真美・・・。」
何度も真美をよんだが、真美はずっと目を閉じている。
「・・・ありがとう・・・。」
悠太はそっといった。
涙が溢れる。
「あ・・・」
真美を見ると目から涙がでていた。
キレイに光っている。
その瞬間だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



あれから人を愛せない。
好きになったらその人をすぐに失いそうで。
まだ心にある、真美。
思い出すたびに泣けてきてしまう。
僕はずっと、真美のことが好きなんだ・・・・。
12月25日、PM5時。
街はなにも知らずいつものように動いてる。
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