昼間の空、夜よりも輝いて・・・・・・・・・


海辺の住人   「彼女」


あたしは海途のいるところまで走った。
学校にはもう間に合わない。
それを承知して。
学校よりも、今は海途のほうが大事だから。
・・・・・・ついた。
全力で走ったからか、あたしは情けないほどに息を切らしていた。
顔をあげ、海途を見ると、海のほうをむいて、
誰かに話しかけるように話していた。
その横顔はまさに嬉しそうに、あたしなんかと話しているときよりも・・・・
もちろん、前には誰もいなくて。
海途には見えて、あたしには見えない。
海途の前には誰がいるの?
あたしは、考えた。
昨日のことから思ってたけど、「海途は成仏できない幽霊じゃないか」
なにか未練があって成仏できないのか。
だからここにいて、なにもわからないのかもしれない。
・・・・・ただのあたしの妄想だけど。
「夏海?」
海途があたしのことをよんだ。
「どうしたの、もう学校だと思うけど。」
いつもとは違う、冷たい目で冷たい言葉。
どうしたのって・・・そっちがだよ。
こんなこと思ったけどいえなかった。
「学校・・・・そだね・・でもこのままだと遅刻だし、
 先生厳しいから行きたくない。」
「ダメだよ、いかなきゃ」
「いいの、別に・・つまらないから。」
「でも・・・・」
「あたしは、あたしの好きなように生きるから。
 今は海途のそばにいる。」
あたしは自分でびっくりした。
はっきりとした口調で思いきったことをいってて。
海途は・・・・微笑んでた。
どうしてそんなに笑顔でいられるの。
「ねぇ」
「ん?」
しばらくの沈黙。
風で髪が静かになびいている。
「海途、なんで今ここにいるの、
 それからさっき誰かとしゃべっているように思えたけど
 誰か、いたの?」
海途はまたあのときのうに困った顔をした。
でもすぐ答えてくれた。
「僕は彼女としゃべってた。
 彼女は・・・・去年の夏にこの海の波にさらわれて、
 そのまま海のそこへ・・・・
 僕は気づけば彼女としゃべってたんだよ。
 今、どうしてここにいるのかもわからないから・・・・・・」
「・・・・彼女?」
「僕には彼女がいて・・今のようなことが起きて・・・
 それしか、わからない。」
「そう、なんだ・・・・」
そのとき、心がズキッとした。
何故だかは自分ではわからない。
微妙な気持ちが交差しあう。
「彼女の名前は?」
「冬海・・・・冬海の「み」は海っていう字で。
 夏海と一緒。」
「・・・・でも季節は真逆だね。」
「うん・・・・」
「今日、ずっとここにいようかな。」
「え」
「学校もつまんないし、家も帰っても誰もいないし。
 それよりは海途にここにいたほうがいい。」
「そう・・・・・でも僕・・・・」
「なに?海・・・・」
海途のほうを向くとそこには光。
足からどんどん消えて行く・・・・・・・・。
「海途!?」
「僕、こうやってでてきて、消えるんだ・・・・・。」
そういって消えた。
光とともに・・・・消えた。
1人、昼間の海に残された。



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