「もう一度、あの場所で待っています。」


海辺の住人   「奇跡」


あれから1ヶ月がたった。
もう暑い日々はすぎ、すっかり涼しくなった。
ここしばらく、「海」も「海途」も、わすれていた。
希望通りの行動をした、でも、また思い出してしまった。
昨日みた夢で。


あたしは夜の海にいて、黙って海と満月を見ていた。
車の音、波の音、すべてを聞きながら。
だけどあたしは目をつぶり、その場を動こうとしない。
何を考えているのかもわからずに。
すると涙がでてきた。
でもそれをふこうともせず、涙をずっと流している。
「海途・・・・・」
海途?聞いたことのある名前だけど思い出せない。
一体、誰なのだろう。
「あいたい・・・・」
海途・・海途・・・・海途・・・・・・・・・・・・・・。
「もう一度、ここで会おうよ・・・・。」
海途・・・思い出した。
あたしが大好きだった人で、本当のお父さん。
青い瞳でさらさらの黒い髪の毛。
お母さんは冬海で、すんだ声で黒いおかっぱ髪。
消える最後の最後にあたしにあってくれた二人。
今、どこへいるのだろう。
消滅だから・・天国にもどこにもいないのかな。
あんな唐突な別れ、あたしはみとめない。
もう一度、あいたい・・・あいたい・・・・・・・。


この夢のようにあたしは今、海と満月を見ている。
周りの音を黙ってきいてる。
海途と冬海さんのことを考えて。
いや、お父さんとお母さんのことを考えて。
ずっと生きていてくれればきっと幸せな家族だっただろうに。
あたしもこんな女じゃなかったと思う。
ずっとずっと普通の女で、個性のない女。
だとしても、幸せな家族像が浮かぶ。
二人にあいたい、そしていっぱい話したい。
あたしと二人の出会いはまさに奇跡のようで、偶然で。
あたしはここに行くとずっと笑顔で。
海が大好きになれて。
自分の名前が大好きなった。
二人にお礼をいいたい。
またここで会えるように、あたしは奇跡を起こす。
二人にきっと会えると願いをこめて・・・・。
あたしは目をつぶって願いをずっと頭のなかでいっていた。
二人にあいたい、二人にあいたい・・・・・。
奇跡は自分で起こすものなのだから・・・。
・・・・・・・・。
「夏海。」
目を開いて、声のする方を向いた。
そこには二人、お父さんとお母さん。
そして後ろにはあたしをここまで育ててくれたお母さんがいた。
あたしは涙がでてた。
泣かないと決めていたのに・・・。
「大丈夫だよ、僕らはここにいる。」
「ひっ・・・・・ひっ・・」
「君が奇跡を起こしたんだ。」
「ひっひっく・・・く・・ひっ・・・・・」
海途はあたしを抱きしめてくれた。
あたしは胸のなかで泣いた。
「あんな別れでごめんって僕らはずっと思ってたから・・
 君があいたいと思ってくれて嬉しいよ。」
「・・・・・ひっ・・」
「僕らは消滅なんかしない、だって魂は天国で生きているんだから。
 魂があるかぎり、僕らは永遠に消滅しないよ。」
「・・・・・・・よかった・・・」
嬉しかった。
ずっと消えないんだ。
魂が、あるかぎり・・・・・。
あたしは奇跡を起こした。
冬海さんとお母さんは笑顔でこっちを向いてる。
あたしも、微笑んだ。
嬉しい、ありがとうと思いながら・・・・。
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